世のなかの不条理を教えてくれたスミコちゃん。

スミコちゃんは、小さいころから賢くて物覚えが良くてスポーツもできた。保育園のころは何冊分かの絵本を一字一句間違えずに空で読めたし、小学生の低学年ですでに犬棒かるたと百人一首は全部覚えていたと思う。たまにTV番組に出てくるもの凄い記憶力の持ち主の小学生みたいに。

 習字は上手で書初めではよく入選していたし、普段書く字も大人みたいに(行書だった)奇麗だった。

ピアノも小さいころから習っていて、小学生の高学年の時は、ピアノの苦手な担任の先生に代わって音楽の時間はずっとピアノの担当だった。中学生の時はスミコちゃんが作詞作曲したクラスの唱歌を合唱コンクールで歌ったこともあった。

クラブはテニスをやっていて、頑張り屋さんなこともあって普通にレギュラーになれた。

得意の記憶力は勉強だけじゃなく、林家ぺーみたいに芸能人の誕生日は言えたし、当然クラスの子全員の誕生日も言えた。

こんなにすごいスミコちゃんだけれども、ただひとつだけ苦手なことがあった。

美術関係である。というか美的センスというか。

解りやすいのが彼女の服装で、これはちょっと違う人なのでは・・・と察しがつくのである。大人になった今でも小学生のころから変わらず、カントリー柄の長めのギャザースカートを履いている。一度彼女の職場で見かけたときは、仕事でもカントリー柄のスカートを履いていたので、ちょっと驚いて彼女に見つからないように物陰に隠れてしまったくらいである。(彼女は公務員)

中学生の時の夏休みの宿題では、毎年美術の先生をある意味唸らせていた。(美術の先生は3年間同じ先生だった)1年生と2年生のときは、中学生なのに保育園児のような水彩画を提出し、字はあんなに綺麗なのに絵はなんて雑なんだと、七不思議のひとつに数えてもいいなぁと思ったことを覚えている。2年生で提出した課題に関しては、名画の模写というテーマがあったにも関わらず、自分の好きな時代小説の挿絵らしきものを提出してのけた。まぁ彼女にとっての名画なら間違いでないかもしれないけれど。

3年生の夏休みの課題は、紙粘土で人間の動きのあるポーズを作ってくることだった。みんな大抵は野球だとか走っているなどスポーツをしているところを提出したのだけれど、スミコちゃんの作品は、良く言うとなんだか分厚いジンジャーマンのようなもの、悪く言えば呪いの藁人形のようなものが大の字に寝そべっており、おまけに四肢はなぜが分裂していた。

夏休みの課題は彼女の代表作だったのだが、その他の日々の美術の授業での彼女の作品はなんだかこう崩壊しているものが多かった。

しかし、ここではっきりと世の中の不条理を知ることになる。

スミコちゃんの中学の成績は美術を含め、美術を含め・・・オール5だったのである。

後で知ったのだが、大人の事情(?)というやつで、彼女は進学希望で勉強もよくできたし、美術も「5」にしたということだった。

不可解で不条理。

ちょっとくらい「4」でもいいじゃん。

 

 

 

彼女については武勇伝も多いので機会があれば、何か書きたいな。


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